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2年ほど前に祖母が亡くなって、父が中心になって身の回りの整理を進めていた。それを横で見ていて、自分は長男だと改めて気づいた。父のやっていることは、いつか自分に回ってくる。実家の家と、父の田舎にある山林や畑。まだ何も動いていないが、「実家じまいの進め方」だけでも先に頭に入れておきたくて、調べて整理してみた。
先に言っておくと、うちはまだ実家じまいをしたわけではない。だから体験談というより、「これから向き合う人間が、何から確認しておくか」のメモに近い。それでも、元不動産営業として仕事で見てきた部分と、自宅を賃貸に出した経験があるので、そこは書ける範囲で書く。
実家じまいとは何をすること?
実家じまいとは、親が住んでいた家(または今は誰も住んでいない実家)を、売る・貸す・解体するなどして片付けることだ。家の中の荷物の整理から、名義の確認、建物をどうするかの判断、税金の手続きまで、やることは意外と多い。
難しいのは、お金や手続きより先に「決めなきゃいけないこと」が多い点だと思う。家族の気持ち、建物の状態、土地の場所。この3つで正解が変わるからだ。
実家じまいの進め方①:まず「誰の名義か」を確認する
最初にやるのは、家と土地の名義(登記簿に載っている持ち主)の確認だ。亡くなった祖父や祖母の名前のままになっている、というのは珍しくない。名義が古いままだと、売ることも貸すこともできない。
しかも、2024年4月から相続登記(相続した不動産の名義を変える手続き)は義務になった。法務省によると、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料(罰金のようなもの)の対象になる。2024年4月より前に相続した不動産でも、まだ登記していなければ対象で、期限は2027年3月31日までとされている。詳しくは法務省の相続登記の申請義務化のページにまとまっている。
「親が元気だから、まだ関係ない」と思いがちだが、祖父母の代の名義が残っている家は、今のうちに確認しておくと後が楽になる。法務局で登記事項証明書を取れば、誰の名義かはすぐに分かる。
家の中の荷物の片付けも、早めに頭に入れておく
売るにしても、貸すにしても、解体するにしても、家の中の荷物は片付けなければならない。家具、家電、衣類、食器、長年の暮らしの分だけ物は溜まっている。亡くなってから動く場合は、遺品の整理という意味合いも加わるので、気持ちの面でも時間がかかりやすい。
片付けは、順番を決めておくと進めやすい。
- 通帳、印鑑、権利証(登記済証)などの大事な書類と、形見として残したい物を先に探して取り分ける
- 残りの物は、自治体の粗大ごみで出せるものと、回収を頼んだほうが早いものに分ける
- 量が多いときは、不用品回収の業者に見積もりを頼む
注意したいのは、回収業者の選び方だ。家庭から出る不用品の回収には、市区町村の許可が必要とされている。トラックで巡回している業者や、チラシだけで連絡先が書いてある業者には、許可のない回収業者が混じっていることもあるので、依頼する前に許可の有無と、料金の内訳を確認しておきたい。1社だけで決めず、複数社の見積もりを並べると、料金の相場もつかみやすい。
不用品回収の業者を、一度にまとめて比較できるサービスもある。
片付けを自分たちだけで進めるか、業者に頼むかは、荷物の量と、実家までの距離で変わる。遠方に住んでいると、何度も通うだけで交通費と時間がかかる。そこは、一度に頼んだほうが結果的に安く済むこともある。
売る・貸す・解体する、3つの選択肢
名義が分かったら、次は建物をどうするかだ。大きく分けると選択肢は3つある。
| 選択肢 | 向いているケース | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 売る | 誰も住む予定がなく、手元に置く理由がない | 査定は複数社で比べる。税金の特例も確認 |
| 貸す | 立地が良く、借り手が見つかりやすい | 修繕費・退去後の原状回復・管理の手間がかかる |
| 解体する | 建物が古く、そのままでは売れない・危険 | 解体費用が先に出る。更地になると固定資産税が上がる場合がある |
貸すという選択肢は、思ったより手間がかかる
うちの場合、以前に住んでいた家を売るか迷って、結局しばらく賃貸に出したことがある。管理は購入した不動産会社のサービスに任せたが、それでも手間と持ち出しはあった。内装のクロス張替えは自腹だった。20年ほど前の話で、当時の単価は1㎡あたり680円台くらいだった。2年ほど前の見積もりでは1,100円前後になっていたので、20年で5割以上上がった計算だ。今の相場も、量産品のスタンダードなクロスで1㎡あたり1,000〜1,500円ほどと言われていて、うちの見積もりはその範囲の中でも、やや安めだったと思う。しかも、壁1面だけの小さな張替えでも、職人さんの1日分の費用や諸経費がかかるので、最低でも2〜3万円ほどの工事料金が出ることが多いようだ。今貸すなら、修繕費は当時より重く見たほうがいい。
もうひとつ痛かったのがエアコンだ。住んでいたときに自分で買って使っていた2台を、そのまま付けた状態で貸し出していた。賃貸のために新しく買ったわけではない。ところが退去のとき、借主さんが「自分の物だ」と言って持っていってしまった。管理会社には「年数が経っていて価値はないから、諦めましょう」と言われて終わりだった。納得はいっていないが、設備を残して貸すときは、誰の持ち物なのかを先にはっきりさせておいたほうがいい。
家賃が入るのは魅力的だ。ただ、古い実家を貸す場合は、貸す前の修繕費が想像以上にかかることもある。「貸せば何とかなる」と考える前に、修繕費と空室の期間をざっくり見ておいたほうがいい。
売るなら、査定は1社で決めない
売ると決めたら、まず査定(いくらで売れそうかの見積もり)を取る。ここで大事なのは、1社だけで判断しないことだ。
不動産会社の査定額は、築年数・地価・立地条件などを計算して出すので、会社が違っても似たような金額になることが多い。元不動産営業としても、そう感じている。売り主の希望もある程度は考慮してくれる。それでも、売り出し価格の考え方や売り方の提案は会社ごとに違う。複数の意見を並べて初めて、自分の家の相場感がつかめる。査定を頼むことと、売ると決めることは別の話なので、迷っている段階で見積もりだけ取っても問題ない。
相続した不動産の査定や相談を受け付けているサービスとして、こういうものがある。
相続した家ではなく、今住んでいる持ち家や、自分名義の家の売却を考えている場合は、訪問査定(担当者が実際に物件を見て出す査定)を申し込めるサービスもある。
どちらも、申し込む前に対応エリアや条件は各サイトで確認してほしい。仲介手数料の話は別の記事でまとめたので、売却時の費用が気になる人はこちらも読んでみてほしい。
相続した空き家を売るなら、税金の特例を先に確認
亡くなった親の家を相続して、そのまま売った場合には、「空き家の3,000万円特別控除」という特例が使えることがある。売って出た利益(譲渡所得)から、最大3,000万円を差し引ける制度だ。
ただし条件が細かい。国税庁のページによると、主な要件は次のとおりだ。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家であること
- 相続の開始から3年を過ぎる年の12月31日までに売ること(2027年12月31日までの譲渡が対象)
- 売却額が1億円以下であること
- 耐震基準を満たすか、売った翌年の2月15日までに耐震改修か解体をすること(解体して更地で売る方法もある)
- 相続してから売るまで、貸したり自分で住んだりしていないこと
相続人が3人以上いる場合は、控除額が2,000万円になる。細かい条件は国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確認できる。
注意したいのは、「貸してしまうと使えなくなる」点だ。さっき書いた「貸す」という選択肢を取ると、この特例から外れる。売るか貸すかで迷っているなら、売却時の税金まで含めて先に整理しておくと判断しやすい。実際に適用できるかは、税務署か税理士に確認してほしい。
解体するなら、費用と補助金を見ておく
建物がかなり古く、そのままでは売れない場合は、解体して更地にする選択肢もある。気になるのは費用だ。
目安としては、木造住宅で1坪あたり3万〜5万円という見方が多い。30坪なら90万〜150万円ほどになる計算だ。ただし、建物の大きさだけで決まるわけではない。重機が入れる道かどうか、屋根や壁にアスベスト(昔の建材に含まれることがあった有害な繊維)があるか、庭木やブロック塀を撤去するかで、金額は大きく変わる。
また、自治体によっては、老朽化した空き家の解体に補助金を出していることがある。工事費の一部を、上限数十万円〜100万円程度までという例が多いようだ。ただし、工事を始める前に申請しないと対象外になる自治体がほとんどなので、先に役所の窓口で聞いておいたほうがいい。
解体の見積もりも、1社で決めないほうが無難だ。同じ家でも、業者によって数十万円の差が出ることがある。複数社の見積もりを一度に比べられるサービスもある。
なお、解体すると土地の固定資産税が上がる場合がある(建物があると土地の税金が軽くなる仕組みが外れるため)。解体して売るのか、解体したあとも持ち続けるのかで、お金の流れが変わる点は覚えておきたい。
田舎の山林や畑は、家とは別の話
うちの場合、父の田舎には山林と畑がある。これも将来自分が引き継ぐ可能性が高い。家と違って、山林や畑は「売りたくても買い手がいない」という問題が出やすい。価値のつきにくい土地は、そもそも査定の対象にならないこともある。
実家じまいと聞くと家のことばかり考えがちだが、土地の種類で手の打ちようがまるで違う。うちは、家の問題と山林・畑の問題を、最初から別々に整理しておくつもりだ。同じ「相続」でも、扱いは全く別物になる。
実家じまいの進め方は、親が元気なうちに話せることから
手続きや費用より、実は一番難しいのは、親と家の話をすることだと感じている。祖母の整理を父がしているのを見て、思ったことがある。亡くなってから動くと、決めることが一気に押し寄せる、ということだ。
とはいえ、「家をどうするつもり?」といきなり聞くのは、親にとっても気持ちのいい話ではない。うちは、まず「実家の書類がどこにあるか」「名義は誰か」といった事実確認から入ろうと考えている。決めごとを迫る話ではないので、親も構えずに答えてくれやすい。
きょうだいがいるなら、誰がどこまで動くかも早めに話しておくと揉めにくい。墓の話も同じで、費用や継ぐ人の問題は墓じまいの費用相場と流れの記事にまとめている。
実家じまいの進め方、まとめ
実家じまいの進め方は、次の順番で考えると整理しやすい。
- 家と土地の名義を確認する(相続登記が済んでいるか)
- 建物の状態と、立地から「売る・貸す・解体する」を絞る
- 売るなら査定を複数社で比べ、税金の特例も確認する
- 解体するなら見積もりを比べ、自治体の補助金の有無を先に聞く
- 家と山林・畑は、別々に考える
全部を一度に決める必要はない。まず名義の確認だけでも済ませておけば、あとの選択肢が見えやすくなる。うちもまずそこからだ。
よくある質問
Q. 実家じまいは、いつから始めればいい?
A. 決まった時期はない。ただ、相続登記の期限や、空き家の特例の期限(相続から3年を過ぎる年の12月31日まで)があるので、相続が発生したら早めに動いたほうが選択肢は広がる。親が元気なうちは、名義や書類の確認だけでも十分意味がある。
Q. 実家じまいの費用は、誰が払うの?
A. 決まりはなく、相続人同士の話し合い次第だ。解体費用や維持費を誰が負担するか、売却したお金をどう分けるかを、先に話しておくと後で揉めにくい。
Q. 古すぎて売れない家は、どうなる?
A. 解体して更地にして売る、買取を専門にしている会社に相談する、といった方法がある。放置すると固定資産税や管理の負担が続くので、先延ばしは負担が増えやすい。
Q. 査定を取ったら、売らないといけない?
A. そうではない。査定は価格の目安を知るためのものだ。複数社に頼んで、納得できなければ売らない選択もできる。





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